想いを送り、心が軽くなる日 

2026 02 25 06:00 PM

不満から始まったお墓づくり

昨年月初めのこと。 一人のご年配の奥様が、少し不安げなご様子でご来店されました。

身なりはきちんと整えられ、姿勢も美しく、けれどその表情にはどこか割り切れない想いが滲んでいました。

「主人のお墓を建てないといけなくて」

そう切り出されたあと奥様の口からこぼれたのは、供養の話よりも、長年胸に溜めてこられた想いでした。

「何も残さんと勝手に逝ってしもたんよ」 

「なんで私があの人のお墓建てなあかんの?」

「子どもらにも父親らしいこと、何もしてへんかったのに」

決して感情的に語られるわけではありません。 

むしろ淡々と、長年積もったものを静かに吐き出されるような口調でした。

それぞれの長い時間

 打ち合わせを重ねるうちに、ご主人とのこれまでの歩みについてもお話しくださるようになりました。ご主人のお仕事は大変特殊で、常に周囲への気遣いを求められるご立場だったそうです。

 その陰で、奥様もまた多くのことを背負い、家庭のことはすべてご自身が切り盛りしてこられたとのことでした。

だからこそ、「世間体があるから建てなあかんだけで…」

そんな言葉も出ていました。

 お墓づくりは、感謝や愛情だけで始まるものではない――

そう感じた瞬間でもありました。

それでも足を運ばれた

 石種のご提案、予算のご相談、打ち合わせは何度も続きました。

 時には愚痴が中心の日もありましたが、それでも奥様は足を運び続けてくださいました。当初は石種変更も検討されましたが、最終的には国産の大島石を選ばれ、さらに一回り大きなサイズでの建立を決断されました。

 建之者名の打ち合わせの際には、当初、次代を担う息子様お二人のお名前を刻むお考えでした。ところが長男様にご相談された際、「お母さんの名前も入れてほしい」、そう言葉をかけられたそうです。 お話しくださったときの表情には、それまでとは少し違う、温かいものがにじんでいるように感じられました。

 最終的に建之者名は、三名連名で刻むこととなりました。


開眼供養の日

 当日の朝は、それまでの冷え込みが嘘のように、やわらかな光が差し込む穏やかな空気でした。

 現場へ向かうと、奥様はすでにお花やお供えの準備をされていました。

「ありがとう、ありがとう」-その表情は、最初にお会いした日の面影とは違い、とても穏やかなものでした。

 読経が終わり、最初におっしゃった言葉は

「はぁ~、これでホッとしたわぁ!」

さらに墓石を見上げながら、「サイズ大きくしてよかったわ。立派やわ」「きれいなお墓にしてくれてありがとう!」そして最後に、笑いながら、

「こんな立派なお墓やったら、私、いっしょに入ってもええわ!」

心が整うということ

後日、奥様はお菓子を持って事務所を訪ねてくださいました。


「あの人が亡くなってから、いろーんなわだかまりや不安があったけど、それ全部、お墓ん中に放りこんできたみたいに感じるわ。」

「喉の奥から下腹まで、ググーっと痞えてた柱みたいなものが無くなったんよ。」


 さらに、長いあいだ体中に出ていた原因不明の赤い斑点が消えていたともお話しくださいました。心の中の重たいものがほどけたとき、身体まで軽くなることはあるのかもしれません。


今回のご縁を通じ、人の心にある想いの深さというものを改めて感じさせていただきました。





Raita Aoyama

Raita Aoyama

CEO 株式会社青山