昨年月初めのこと。 一人のご年配の奥様が、少し不安げなご様子でご来店されました。
身なりはきちんと整えられ、姿勢も美しく、けれどその表情にはどこか割り切れない想いが滲んでいました。
「主人のお墓を建てないといけなくて」
そう切り出されたあと奥様の口からこぼれたのは、供養の話よりも、長年胸に溜めてこられた想いでした。
「何も残さんと勝手に逝ってしもたんよ」
「なんで私があの人のお墓建てなあかんの?」
「子どもらにも父親らしいこと、何もしてへんかったのに」
決して感情的に語られるわけではありません。
むしろ淡々と、長年積もったものを静かに吐き出されるような口調でした。




